耳の裏
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不意に蚊の鳴くような声が聞こえた。
まわりには誰もいない。独り言を呟いたわけでもない。
空耳、だろうか?
そう思っていると、また微かな声が聞こえた。聞こえ方に違和感がある。耳の裏から直に響くような声。
なにかしら? と、洗面所に向かう。そして鏡越しに手鏡をかざしてみた。
耳の裏に口が、あった。
見覚えのある口。そう言えば、声にも聞き覚えがある。
すると今度は少し大きめの声が聞こえた。思わず懐かしさに涙腺が緩む。
私はある事を確認するため仏壇の前に立った。視線の先には旦那の遺影。その遺影には……。
口が、なかった。
旦那は若くして病で亡くなった。あれからもう十年が過ぎる。今日は銀婚式。私は耳の裏をソッと触った。
「あなた、覚えていてくれたのねぇ」
旦那は私の耳の裏に口付ける事が好きだった。その後には決まってこう言っていた。その言葉がハッキリと、耳の裏から響いた。
「愛してるよ」
まわりには誰もいない。独り言を呟いたわけでもない。
空耳、だろうか?
そう思っていると、また微かな声が聞こえた。聞こえ方に違和感がある。耳の裏から直に響くような声。
なにかしら? と、洗面所に向かう。そして鏡越しに手鏡をかざしてみた。
耳の裏に口が、あった。
見覚えのある口。そう言えば、声にも聞き覚えがある。
すると今度は少し大きめの声が聞こえた。思わず懐かしさに涙腺が緩む。
私はある事を確認するため仏壇の前に立った。視線の先には旦那の遺影。その遺影には……。
口が、なかった。
旦那は若くして病で亡くなった。あれからもう十年が過ぎる。今日は銀婚式。私は耳の裏をソッと触った。
「あなた、覚えていてくれたのねぇ」
旦那は私の耳の裏に口付ける事が好きだった。その後には決まってこう言っていた。その言葉がハッキリと、耳の裏から響いた。
「愛してるよ」
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公開:18/10/16 23:59
むう宿題・恋愛編
4/10 銀婚式
まったり。
2022年…3本
2021年…12本
2020年…63本
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2018年…320本 (5/13~)
壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)
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