隣の芝生は青より蒼し

茄子と玉子が喧嘩した。方向性の違いからだ。和物の炒め料理として人気を博していた二人の決裂に、世間は愕然とした。
「なにがいけなかったんでしょう」
硝子が尋ねると、障子が答えた。
「一緒にいる時間が長ければ長いほど、たまには距離を置きたくなるものかもしれないね。特にあの二人は一緒くたにされてどっちが主役かわかったもんじゃない」
縄張りは交じれど分野違いで適度な距離を保つ二人。世間は覇権争いを気にしているが、互いに尊敬と羨望の念を抱いていた。そこへ、冊子が走り込んだ。
「号外号外！あの二人また寄りを戻したみたいだ！」
静けさに飛び込んできた冊子に、わざとらしい咳払いを投げ返したのは、草子だ。
「誰やと思うたら、人のプライベートを騒ぎ立てる青二才やないの。ほんな些細なことでよう楽しめはる」
「うっわ。いたよ時代遅れ。古書物は引っ込んでな」
隣の芝生はなんとやら。似た者同士にも色々あります。