月のゆりかご

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僕は今、テレワークを利用して、月に住みながら地球の会社に勤め、仕事をしている。

民間企業による月旅行が成功して以来、月面生活に夢を見た人々は次々に月へ移住しコロニーを形成していた。
そんな中、仕事の一環で参加した地球と月の星間交流行事で、地球人の僕が月生まれ月育ちの女性と恋仲になったのだが、「地球で一緒に暮らそう」とプロポーズしたら彼女は悲しげに首を横に振った。
僕が見た、最初で最後の彼女の涙。
僕はそれで覚悟を決めた。
科学が発展した現代でも、人は自分の生まれ落ちる場所を自分で選べない。
けれど、どこで誰とどう生きていくかについては、自由だ。

地球には戻らないの?と無粋な質問が時折、38万kmもの距離を光の速さで飛んでくる。
そんな時、僕は少しずつ大きくなってきた妻のお腹に手を当て、そして妻と微笑み合う。
僕らの出した結論が、やがて僕らに返事をくれる。
今はそれを楽しみに待っている。
SF
公開:18/10/16 21:39
更新:18/10/16 21:40
ハッピーエンド 働きたい会社

詩のぶ

小説、詩、短歌、俳句、コピーなど、読んだり書いたりするのが好きです。ショートショートはこれまであまり馴染みがなかったので、ここで色々試しながら勉強できたらと思っています。
何か作るとtwitterで呟いてますのでよろしかったらそちらでも。

Twitter @shinobu_yomogi

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