留守を預かる

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「行ってくるよ」
仕事に出るご主人を玄関で見送り、戸締りをした。

大きな家具を避けながら部屋の隅々まで細かいゴミを吸い集める。ゴミの塊は専用ボックスに廃棄する。絡まった毛が引っかかって少し厄介。
窓拭きをする私を、猫がチラリと見ながら悠々と庭を横切っていく。カメラを持ち上げて生意気な風貌を撮った。

エンジン音が近付いて、家の前で止まる。人の気配に、私はカメラとマイクを構える。
カタンと音を立てたあと、遠ざかるエンジン音を聞き届けて、私は仕事に戻った。

ご主人の帰宅時間が近付くと、エアコンを入れて風呂場の給湯システムをオンにする。

「ただいま」
帰宅したご主人を歓迎してくるくる回る。もちろん戸締りの確認は怠らない。
「今日も猫くんが来たんだね」
ご主人は私の記録を見ながら、美味そうにビールを飲んだ。

役目を終えた私はステーションに戻り、体内に電気を満たしながら眠りについた。
ファンタジー
公開:18/10/14 15:40

ケイ( 長野 )

ショートストーリー、短編小説を書いています。
noteでも作品紹介しています。​​
​​​​​https://note.com/ksw

テーマは「本」と「旅」です。

2019年3月、ショートショートコンテスト「家族」に応募した『身寄り』がベルモニー賞を受賞しました。(旧名義)
2019年12月、渋谷TSUTAYAショートショートコンテストに応募した『スミレ』が優秀賞を受賞しました。
2020年3月、ショートショートコンテスト「節目」に応募した『誕生会』がベルモニー賞を受賞しました。

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