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水瀬君になんとなく避けられ始めて、三週間と少しが経った頃だった。
外ランチに出る人が多く、人の出払ったオフィスの給湯室。水瀬君とその同期である林さんがお湯を沸かしがてら立ち話をしているのに、私は偶然出会してしまった。
噂話が好きな林さんは、よく誰かを掴まえては給湯室で花を咲かせているのだと、以前後輩に聞いたことがある。
なんの話をしているのだろう。
立ち聞きなんて悪趣味だとわかりながら、私の足はその場から動こうとはしてくれなかった。
「あたしこの前、喫茶店で水瀬と鳴海先輩見ちゃったんだよね。水瀬、鳴海先輩のこと好きなんでしょ」
弾んだ林さんの声が自分の名前を挙げるのに、私の心臓は大きく跳ねた。盗み聞きだ。けれどそれは、私もずっと聞きたかった答えだった。
私は早鐘を打つ心臓を押さえて、じっと息を殺した。
けれど水瀬君は
「その話はしたくない」
ときっぱりと口にしたきり、もう何も言わなかった。
外ランチに出る人が多く、人の出払ったオフィスの給湯室。水瀬君とその同期である林さんがお湯を沸かしがてら立ち話をしているのに、私は偶然出会してしまった。
噂話が好きな林さんは、よく誰かを掴まえては給湯室で花を咲かせているのだと、以前後輩に聞いたことがある。
なんの話をしているのだろう。
立ち聞きなんて悪趣味だとわかりながら、私の足はその場から動こうとはしてくれなかった。
「あたしこの前、喫茶店で水瀬と鳴海先輩見ちゃったんだよね。水瀬、鳴海先輩のこと好きなんでしょ」
弾んだ林さんの声が自分の名前を挙げるのに、私の心臓は大きく跳ねた。盗み聞きだ。けれどそれは、私もずっと聞きたかった答えだった。
私は早鐘を打つ心臓を押さえて、じっと息を殺した。
けれど水瀬君は
「その話はしたくない」
ときっぱりと口にしたきり、もう何も言わなかった。
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公開:18/10/14 11:23
予約の後輩くん
高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。
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