誰も少年の行方は知らない

少年は近所の境内で一人で隠れんぼをしていた。

「もーいいかい？」
遠くの暗がりから人の声がする…

「まーだだよ！」
僕は一人で隠れんぼをしていたはずなのに、いつの間にか友達が出来た気分で嬉しくなった。

でも…顔は見えない…

「もーいいかい？」
誰かは大きな声で言った。

僕はなんだか楽しくなって、境内を抜けて、森の中へと入っていった。
僕は無我夢中に森の中を走り、小さな洞穴のような場所をみつけ、そこに身を屈めて隠れた。

「もーいいよ！」
僕は森中に響き渡る声で言った。

その後…誰かの声はすっかりと消えてしまった。

この森の中には、年に数千人に及ぶ少年や少女が行方不明になり、消息をたっている。警察がいくらこの森の中を捜索しても、行方不明の子供達を発見できなかった。一部の大樹に子供達の名前が羅列して刻まれていた…