くしゃみ

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マリさんは泥棒だ。
春、花粉症の季節だ。マリさんは色んなクシャミを盗むことに夢中になっていた。
大きなくしゃみ、高い声のくしゃみ、ための長いくしゃみ、終わりに尾を引くくしゃみ。
盗んできたクシャミをマリさんはいちいち身につけて自分でやってみせる。とにかく、四六時中僕の隣で色んなクシャミをしている。ずーっとクシャミを繰り返した後で、マリさんは腹筋が痛いとけらけら笑った。ちなみに、僕のクシャミは、ほかのクシャミと比べると頭が大きく揺れるらしい。

盗んだクシャミをこれからどうするつもりか聞いてみた。今回は、盗んだ物を持ち主に返すのは、ちょっといただけない。
マリさんは、うーん、と考えて、火山に放り込んでみようかと言った。クシャミで噴火するだろうか、と。それとも、海の渦潮に投げ入れようか。クシャミで加速するだろうか。
僕はロケットに仕込んで仕舞えと思ってる。花粉症なぞ、宇宙の果てまで飛んでいけ。
ファンタジー
公開:18/10/14 22:27
更新:18/10/14 22:31

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