運命の人

4
8

 私の初恋は中学生の頃。
 それまで幼なじみだったKくんを異性として意識し始めてから恋に代わるまで、そんなに時間がかからなかった。
 その気持ちは向こうも同じで、私たちは晴れて恋人になったのだ。
 けれど初恋が成就しないというのは本当なのかもしれない。
 高校生になる時、彼は故郷を捨てて都会に行ってしまった。
 だけど私には両親を、ふるさとを捨てる度胸はなかった。
 それから数十年。
 私はいまだに田舎で独り身だ。
 そんな私のもとに小包が届いた。
 中には半ばミイラ化した小指が入っていた。
 風の噂で、Kくんがヤクザになったと聞いていたけど……。
 私はもう少し待ってみることにした。
 彼の帰る場所を残しておかないとね。
 そう決めたのは、しなびた小指から伸びる、赤い糸が光って見えたから。
 もうここまで来たら、その片方が私の小指に繋がっているというお伽噺を信じてみようと思うのだった。
恋愛
公開:18/10/12 17:54
赤い糸 幻想

猫春雨( 和歌山県 )

短編の執筆をライフワークとしています。
主に幻想的な作風で、童話寄りの、日常に潜む不思議を紡いでいます。
また、そう言った作品を使って豆本も製作。
普段は超短編というオチがふわっとした作品を書いているので、はっきりとオチの付けるショートショートは勝手が違うものですね(^^;

よろしくお願いします(^^)

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容