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カサカサと銀杏の落ち葉、踝まで洗う漣ように。彼の靴も、光と影のモザイクに織り込まれて、並木から月の木漏れ日、彼自身を光と影との象嵌細工にメタモルフォーゼさせ。影、光、影、光。外灯の無い並木道をぎっちりと埋め尽くした銀杏の葉、幾層にもなって。その凹みの全てが彼を見つめ、瞬きする、空虚な眼のように。首筋に月光が網目ニシキヘビのような文様を刻印した矢先に、舗道と同じ嵩にまで吹き寄せ積もった銀杏の陰影に擬態した膝下ほどの深みに、ほろ酔いの彼は嵌まりこんで、膝が、足首が、脛が、腰が、右ひじが、そして、尾てい骨と後頭部と、ほぼその順番に、鈍い音と痛みが、モザイクのように響いて月を見上げ。血が出ている。指が動かない。大丈夫だ。ただ、側溝に落ちただけだ。ぬるぬるする。靴の中がぬるぬるする。顔は。鼻血は出ていない。畜生頭が痛い。痛い、痛い。ゆっくりと浸食するように、落葉が降る。積る。
ファンタジー
公開:18/10/12 15:41
更新:18/10/12 21:44
更新:18/10/12 21:44
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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