ズレる結婚指輪

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(夫の日記)結婚指輪を真横に押すと、何の抵抗も痛みもなく反対側に押し出されてくる。
(妻の証言)左手の薬指に包帯が巻いてあった。大丈夫かと訊ねると「それは僕の方がききたいよ」と言って黙ってしまった。
(宝石店の証言)「特殊な仕掛け? あれは大量生産で… 値段より気持ちの問題だからね」
(同僚の証言)「指輪をいじりながら、妻は幸せだろうか?」なんて言ってましたよ。
(妻の証言)その頃から、私に、やたらと謝ってくるようになって…
(夫の日記)指輪を押し出してしまいたい気持ちが、日増しに強くなる。
(妻の証言)夕食後、夫がソファーで包帯を外していました。「大丈夫?」と訊ねると「ごめんな」って。また塞ぎの虫が出た、と思い、洗い物を続けていたら「コトリ」という音がして、結婚指輪が転がってきました。
「あなた指輪が」と振り返ると、夫の首が床に落ちるところで…(嗚咽)
 この事件は自殺として処理された。
その他
公開:18/10/12 12:37
更新:18/10/12 22:07

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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