予行演習

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俺は少し興奮気味だった。
「あいつを殺してやる」
そう思って買ってきたナイフが目の前にある。

テーブルに置かれたナイフは鈍い光を放っていた。
光に誘われるように、部屋にあった鏡の前に立つ。
「目の前にあいつがいるとしたら、どこを狙う?」

首の血管を狙うか。それとも心臓か。
自分の身体を触って何度も確かめた。
「今だ!」
見えない相手に向かって、ひと思いにナイフを突きつける。

その時、右腕に鈍い痛みを感じた。
見るといつの間にか傷が出来ている。

「不注意だったな」
我に返って、ふと気づいた。
ナイフを持っていたのは右手だ。

ゆっくりと顔を上げ、もう一度鏡を見た。
鏡の中の俺は、血の付いたナイフを持って笑っている。

そして刃先はまっすぐ、心臓に向けられていた。
ホラー
公開:18/10/13 00:15
更新:18/10/13 00:17

ろっさ( 大阪府 )

短い物書き。
皆さんの「面白かったよ!」が何よりも励みになります。誰かの心に届く作品を書いていきたいです。

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