「声」

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その日、私は風邪で寝込んでいた。
スマホの着信音。誰よ、しんどいのに。そう思いながら手を伸ばす。
彼、からだ。いつも電話なんてかけて来ないのに、珍しい。
「もしもし」
「お、もしもーし! もしもし! もしもし?」
何回言うのよ。
「聞こえてるよ」
「あ。お、俺、俺! 風邪ひいたんだって? さっきお前の友達から聞いてビックリしたわ。ほら、その……ラインもないから、さ。んで、えーと……だ、大丈夫か?」
そういえばラインすらしてなかった。心配かけちゃったか。それにしても電話慣れしていない彼が面白い。
「うん。大丈夫。元気印の私が風邪なんかに負けるわけないでしょー」
「そ、そうか。なんだ、心配して損したぜ! わははは!」
そんな照れ隠しのような彼の笑い声。それは耳を越え、彼の笑顔と共に脳裏にまで響く。
「正直、結構つらいけど、あんたの声を聞いたら……」と心の中で呟いた。

ちょっと元気になったよ。
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公開:18/10/12 23:56
むう宿題・恋愛編 2/10 声

壬生乃サル

まったり。

2022年…3本
2021年…12本
2020年…63本
2019年…219本
2018年…320本 (5/13~)

壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)

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