凶花~カチカチ花~

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村の天辺に、カチカチ草の林があった。500年に1度、一斉に花を咲かすという。カチカチ花は災いを呼ぶという迷信があり、「カチカチ花が咲いたら村を捨てよ」とも言い伝えられていた。

その日、友達と歩いていると、カチカチという音が風に乗って聴こえてきた。村の天辺に行くと、カチカチ草が真白な花をたくさんつけていた。
「花が咲いてるよ」
友達が駆け寄り、花に触り、
「痛いっ」
と言って怯えた顔で私を見た。
「噛まれた」
それを合図とするように、大量の花が友達に群がり、ピラニアのように、手に足に腹に噛みついた。痛い痛いと悲鳴をあげ、食いちぎられる姿を見、私は這うように逃げ出した。

カチカチ林が下りてくるよ。早く逃げて早く隠れて。噛みつき食われ、骨の髄までしゃぶられる。

村に下りたカチカチ花は500年ぶりの食事をし、ホホホォーッと満足したような雄叫びをあげると、一斉に枯れ果てて新しい実を付けた。
その他
公開:18/10/11 13:04
更新:18/10/11 13:05
10の忌まわしい物語

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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