アマヤドリの花

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雨がしとしとと降ってきた。
傘をばさり、と開く。
雨の降る日は、いつも祖父母の家のことを思い出す。
私が小学生の頃だった。

その年の夏は、珍しく雨の日が多かった。祖父が連れていってくれた畑も、午後から雨が降り始め、二人で雨宿りをしていた。

「雨、止まないね」
「そうやなぁ、なかなか止まんなぁ」
「せっかく来たのに、つまんないね……」
私がそんな風に呟くと、祖父はしばらく黙ってから、いや、そんなことないぞと囁くように言った。
「ちょっと花、取りに行くか」
そう言うと祖父は、傘の下に二人が入れる空間を作って私を呼んだ。
しばらく進むと。

「わっ」
私は声を漏らした。
そこには、色とりどりの傘が咲いていた。
「これはアマヤドリっていう花でな。雨の日にしか開かんのや。好きなん持っていき」

私はその不思議な花畑でどろどろになるまではしゃぎ回った。

あの雨と土の臭いは、ずっと覚えている。
ファンタジー
公開:18/10/11 20:01

たけなが


たくさん物語が作れるよう、精進します。
よろしくお願いします!

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