薬指に指輪~ブラックVer.

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彼が指輪を右にはめてる時は、『今夜は泊まるよ』の合図。
その日は細くへこんだ左手薬指に、イタズラするのが私達の習慣だった。
銀の指輪に隠された、期間限定のピンクの指輪。
いつばれるだろう。その想像だけで、私はゾクゾクした。

――悪い事は出来ないもので、ある時彼の浮気は奥さんの知るところとなり、
地獄のような愁嘆場の果て、彼は法廷で莫大な慰謝料を請求され、
彼の左手薬指から、銀の指輪は消えてしまった。


さようなら、お気の毒な貴方。
貴方とおそろいの指輪なんて、私はごめんだわ。
浮気性の夫に泣かされてばかりの、もっと気の毒な友達と、
ループし続ける彼女の愚痴に、息が詰まりそうな私を解放してあげたかっただけ。
捨てられた犬みたいに憐れっぽくせがんで、新しい首輪と飼い主でも探しなさいな。
ミステリー・推理
公開:18/10/11 18:42

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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