薬指に指輪

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彼女が指輪を右にはめてる時は、『旦那が留守』の合図。
その日は細くへこんだ左手薬指に、イタズラするのが俺達の習慣だった。
銀の指輪に隠された、期間限定のピンクの指輪。
ばれるかばれないか、そのスリルだけで、二人ともゾクゾクした。

――悪い事は出来ないもので、ある時俺達の関係は旦那の知るところとなり、
地獄のような修羅場の果て、俺は法廷で莫大な慰謝料を請求され、
彼女の左手薬指は、指輪でふさがったままになった。


指輪のデザインは、前のと違うけど。
うん。お察しの通り、俺のとおそろい。
欲を言うなら、ついでにまんまとはめられた首輪が、地味にきつくてさ。
たまには外したいなぁ、とか、ちらっと思わなくもないんだけど。
両手に輪っかよりマシだろうと、自分を慰める今日この頃。
ミステリー・推理
公開:18/10/11 18:40
更新:18/10/11 18:54

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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