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草を刈る。膨大な青草に抗い続ける。
鎌はなまくらになり、しかも青草の裏側にびっしりとついた毒虫や、すすき、茨などの棘。種子に装備された鉤爪が体内に食い込んでくる。熱かった。そしてどこまでも青臭い。
やがて、時間の感覚がなくなり、体を切り裂かれる痛みも遠のき、刈っても刈っても途切れない緑の風景にも慣れた頃、巨大な草の一葉一葉は、全て蟷螂だったと気づいた。
細い足が絡みあい、解くことのできない絶望的な密着状態のまま幾年を重ねたのか知れない。蟷螂どもは不自由にもがき、僕の首を刈ろうとするが、その動きは他の蟷螂に邪魔されて、微妙なうねりとなって伝播し、無関係な蟷螂の首や腹が引きちぎられたり、捻じ曲げられたりした。
複眼は真っ赤に染まり、僕の手にする鎌を凝視しながら、なすすべなく身体を刈られ、バサバサと倒れていく蟷螂の群れ。
「供養だ。これは供養だ」
僕はそう念じながら、草を刈り続ける。
鎌はなまくらになり、しかも青草の裏側にびっしりとついた毒虫や、すすき、茨などの棘。種子に装備された鉤爪が体内に食い込んでくる。熱かった。そしてどこまでも青臭い。
やがて、時間の感覚がなくなり、体を切り裂かれる痛みも遠のき、刈っても刈っても途切れない緑の風景にも慣れた頃、巨大な草の一葉一葉は、全て蟷螂だったと気づいた。
細い足が絡みあい、解くことのできない絶望的な密着状態のまま幾年を重ねたのか知れない。蟷螂どもは不自由にもがき、僕の首を刈ろうとするが、その動きは他の蟷螂に邪魔されて、微妙なうねりとなって伝播し、無関係な蟷螂の首や腹が引きちぎられたり、捻じ曲げられたりした。
複眼は真っ赤に染まり、僕の手にする鎌を凝視しながら、なすすべなく身体を刈られ、バサバサと倒れていく蟷螂の群れ。
「供養だ。これは供養だ」
僕はそう念じながら、草を刈り続ける。
その他
公開:18/10/10 12:18
星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。
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