予言者の望み

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古い時代、どんな予言も外さない、優れた予言者があった。
あまりに当たるので、人々は予言を授かろうと、朝から晩まで彼の元を訪れた。気の善い予言者は、乞われるまま、集まる人々に予言を授けた。
評判を聞きつけ、山を越え、海を渡って人が押し寄せた。
勝手に寄越された対価と返礼がうず高く積まれ、延々果てない行列の間に、いさかいも起きるようになった。予言者は悲しげに眉をひそめ、それでも人々の要求に応え続けた。

やがて時の王が、予言者に目を付けた。間近に控えた隣国との戦に勝利を得ようと、王は兵を率いて彼を城へ連行した。
我が軍が敵を破る未来を予言せよ。王は予言者に命じた。
予言者は黙って首を横にした。幾度命じても、頑として拒む彼に腹を立て、王はその首をはねてしまった。

戦は隣国の大勝に終わった。炎に包まれる城で、庭木にぶら下がった元予言者の首は、長年の望みの叶った様に、安らかにまどろんでいた。
ホラー
公開:18/10/10 07:31

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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