蒟蒻ばあちゃん

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「この村は蒟蒻のお陰で続いているんだ」とばあちゃんは言っていた。
 古来、村には蒟蒻芋が豊富だった。というか、蒟蒻芋しか取れなかった。掘って、細かくして、洗って、練って糊みたいにして、藁灰で煮る。手間はかかるが、これが村の唯一の生産物だった。
 だが、ばあちゃんの言う「蒟蒻のおかげ」というのは、別の意味だ。
 村に疫病が出たとき、祈祷師が死穢を隔離しなければ全滅だと告げた。だが川に流すわけにはいかず、土に埋めても封じたことにはならない。
 もうお分かりだろうか。そう。蒟蒻だ。
 藁灰は強アルカリで殺菌性が高く、念入りに芋を練れば強度もかなりのものになる。
 糊状になった蒟蒻芋を亡骸に塗り、藁灰を雑ぜて茹でれば、安全に埋葬できる。
「他所じゃ珍味だといって重宝がってくれてな。まぁ、こんなもんをよくも、と思ったもんだが」と、ばあちゃんは笑っていた。
 今年は、蒟蒻になったばあちゃんの十回忌だ。
その他
公開:18/10/10 22:58

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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