嫉妬

それは誰にも分からなかった。

その老人会では、シニアフォークダンス大会の団体部門地区予選に向けて練習が行われていた。
選ばれたメンバーは、曲に合わせて熱心に踊っている。
しかし、何度やっても微妙にタイミングがズレるのだ。コーチはビデオカメラで撮影し、モニターでチェックすることにした。

「おかしいわねぇ？息もぴったりだし、フォームに狂いはないわ」

コーチは首を傾げた。撮影の結果、問題はなかったのだ。
だが練習を再開すると、やはりワンテンポ狂うのだ。誰が足を引っ張っているのか？コーチにも分からなかった。

その女は、踊っているメンバーの男性にジェラシーを燃やしていた。
気づかれないように邪魔をしていたのだ。だからビデオに映るわけにはいかなかった。

「私以外の女性とイチャイチャするなんて許せない！」

踊る男性パートナーの足首を掴む白い手は、その妻だった。

それは誰にも分からなかった。