蠢く米

2
6

父はどこかへ出かけたまま戻らず、母は寝室で寝たまま動かない。
家中探したが、食べるものがなく私は空腹だった。
「お腹空いたでしょ? ごめんね。明日にはお腹いっぱい食べられるから」
母がいつも泣きながら私に語っていた『明日』がついに来た。
寝ていた母の体から沢山の米が沸いてきたのだ。
小さな米たちは採れたてなので生きが良く、すくった私の両手からどんどん逃げ出していく。
ゴハンの炊き方なんて知らない私は米をそのまま口へと運ぶ。
もぞもぞと動く米たちが私の口の中で騒いでいる。
噛むたびにプチプチと音を鳴す米たち。
無限に湧き出す米を見て私は喜んだ。

五日後。知らない人たちが私たちの家へ入ってきた。
「大丈夫だから。もう安心だから」
彼らは訳の分からないことを言いながら私を抱きしめ、私から母と動く米を奪おうとした。
許せない。
私は台所から包丁を取り出した。

三日後、湧き出す米の量が増えた。
ホラー
公開:18/10/10 19:50

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容