凶花~嗤う花~

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妻が娘を連れて出ていった。
実家に帰った妻と娘には会わせてもらえなかった。俺は家族のために建てた家にただ一人だ。

夜、庭からクスクスと笑い声が聞こえる。寂しさからの幻聴?
恐々窓を開けギョッとする。背丈の高い知らない花がこちらを窺うように立っていた。妻が植えていたのだろうか。

夜中の笑い声が日増しに増えていく。庭を見ると、俺の背丈ほどの花がずらりと並んでこの家を囲んでいた。
クスリ…と笑い声がして、一つの花が肩を揺らして笑った。つられ周りの花がおかしくてこらえきれないというように、ヒイヒイと笑い出した。
何が可笑しいか。

俺はカッとなり、スコップを取り出すと、笑ってる花を叩き切った。花はゲェとおかしな声をあげ、次々に倒れていった。笑い声が消え、夜が明けていく。

俺は妻の実家の庭で、スコップを手に立っていた。
人のような花のような何かが千切れて転がりながら、あなた、パパと呟いていた。
その他
公開:18/10/10 18:58
10の忌まわしい物語

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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