全部君のもの

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マリさんは泥棒だ。
その日、僕とマリさんは一緒に遠くまで出かけていた。デートらしいデートはいつ以来だろう。芝桜が咲き詰めた丘にやって来て、僕らは海を眺めていた。
「この景色をマリさんにあげる」
マリさんは、ぱっと華やいだ顔をして両腕を広げると景色を布切れ一枚にして、鞄にしまい込んだ。辺りから全てが消えて、僕は足を滑らせ、落ちて行った。
悲鳴をあげる僕を見て、マリさんは鞄から景色を取り出し、放り投げた。すると、僕はまた、芝桜の丘にいた。尻もちをついて。
「僕がいなけりゃ、なんだって盗めたのにね」
「一緒じゃなかったら、この景色も盗んでも意味がないよ」
ファンタジー
公開:18/10/08 21:10
更新:18/10/09 08:59

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