千夜一夜の物語
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駅の自販機に小銭を入れ、出てきた紙を手に帰りの電車に乗る。
ネクタイを緩めて、僕は感熱紙に目を落とす。
そこに書かれているのは、短い短い物語だ。
彼女が教えてくれた。自販機には、千人の書いた千の物語が詰まっているのだと。
その中には、彼女の物語も含まれているのだと。
「あなたのことを書いたの。読んでくれる?」
そう言って彼女は、還らぬ人になった。
最初は彼女を、彼女の物語だけを求めて、狂ったように小銭を押し込んだ。
他の物語は、彼女に辿りつくための障害でしかなかった。でも。
秋風と虫眼鏡の喧嘩に、ついクスリと笑わされた。
長年連れ添った老夫婦の会話に、不意に涙がこぼれた。
小さな物語は少しずつ少しずつ、僕の心を温めてくれた。
あれから半年、彼女の物語にはまだ出会えていない。
でも今は一日の終わりの、この時間が愛おしい。
僕のシェラザードはその先で、きっと待っていてくれる。
ネクタイを緩めて、僕は感熱紙に目を落とす。
そこに書かれているのは、短い短い物語だ。
彼女が教えてくれた。自販機には、千人の書いた千の物語が詰まっているのだと。
その中には、彼女の物語も含まれているのだと。
「あなたのことを書いたの。読んでくれる?」
そう言って彼女は、還らぬ人になった。
最初は彼女を、彼女の物語だけを求めて、狂ったように小銭を押し込んだ。
他の物語は、彼女に辿りつくための障害でしかなかった。でも。
秋風と虫眼鏡の喧嘩に、ついクスリと笑わされた。
長年連れ添った老夫婦の会話に、不意に涙がこぼれた。
小さな物語は少しずつ少しずつ、僕の心を温めてくれた。
あれから半年、彼女の物語にはまだ出会えていない。
でも今は一日の終わりの、この時間が愛おしい。
僕のシェラザードはその先で、きっと待っていてくれる。
青春
公開:18/10/08 20:13
更新:18/11/26 20:38
更新:18/11/26 20:38
自分のペースででゆるゆると。
昔書いたtwitter小説を転載したりもしています。
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