草取りをする時は軍手を。

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抜けない棘はどうしたってダメで、針でつつく勇気もないし。かといって無理に取り出そうとすれば余計に中へ入り、熱を持って痛みを伴い、腫れてしまう。

諦めていつか抜けるだろうと放るのに無意識に気になって、また取り出そうとする試を繰り返す。

しかし棘は1週間たっても1ヶ月たっても抜けず、ついに体の1部になった。

というのも、黒い棘からは根が生え、明らかに私に寄生していた。

背筋が凍った。

そこからは戦いだった。

少し延びて皮膚から出たそれを抜く。だけど根が深く取りきれない部分からそれはまた生え、また抜くのを繰り返す。

ある日痺れを切らして除草剤をつけたら、あっけなくそれは枯れた。ピンセットで引き出したそれは顔があり、ただ、死んだ時の顔をしていた。

棘が抜けるとその後は、またあっさりと日常に戻る。10年前のそのことを思い出したのも、草取りをしていてさっき、指に棘が刺さったからだった。
その他
公開:18/10/09 13:43
更新:18/11/16 21:53
作者は棘が刺さって3日目です

綿津実

自然と暮らす。
題材は身近なものが多いです。

110.泡顔

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