まゆげ

3
7

マリさんは泥棒だ。
マリさんは由緒ある大泥棒の系譜に繋がる若手の泥棒だ。歌舞伎で云えば、何々屋の系譜みたいなもんだ。
そんな伝統を継いでいるマリさんは先代から預かった大切な物を持っている。
それは、モナリザの眉毛だ。
マリさんはこれが嫌いらしい。引き出しの中で目にとまるたびに嫌な気持ちになるという。茶色い、ゲジゲジの眉毛。もう手元に置いておくのも耐えられなくて、ある日マリさんはルーブル美術館のモナリザの絵に返しに行った。ところが、モナリザの眉毛に気がついた職員が眉毛をカビと勘違いして『修復』して消してしまい。眉毛は再びマリさんの引き出しに戻ってきた。
マリさんは、毛虫のような眉毛を菜箸でつまみ上げ、コンロで燃やした。
僕は、パリでモナリザが燃えてしまったというニュースが流れないか、ひやひやしていた。
ファンタジー
公開:18/10/08 22:21
更新:18/10/09 21:22

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容