ブリュー スマイル

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ブラック企業を辞めた翌日、家の周りをブラブラ歩くと、民家から賑わう声。
『ブリュー スマイル』
こんなのあったっけ?
庭先の席につくと、「ここで造ったクラフトビールを提供してます」と、ウェイトレスが素敵な笑顔で言った。
ガシャーーン!
「すみません!」
新米風のウエイトレスが必死で頭を下げている。持ってきたビールをこぼし、お客さんの衣服を濡らしていた。緊張感が走る。
だが、ズボンを濡らした男性が、「ズボンもビールが飲めたよ」と笑った。ちょっと涙目で厨房に戻る新米に、他のスタッフが次々に微笑みかける。
「彼女、叱られちゃいますよね…」
昨日までいた会社では、失敗は死…。目の死んだ同僚たちを思い出す。
「いえ。ここでは一生懸命やっている人の失敗は、お客さんも含めて、誰も責めません。だって、笑顔がビールを醸してるんですから」
ウエイトレスが微笑んだ。
僕は大きく息を吸う。笑顔の醸すアロマがした。
ファンタジー
公開:18/10/07 07:53

十六夜博士

ショートショートを中心に、色々投稿しています。
よろしくお願いします。

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