夢は夜平たく

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アタシには夢がある。
プロのミュージシャンになることだ。
今は素人のストリートミュージシャンだが、その内に絶対プロデビューしてやる。
今日も意気揚々とストリートに繰り出す。

金曜日夜七時の繁華街。
人通りは多い。
華の金曜日。

アタシは背負っていたキーボードを設置して、弾き始めた。
1曲目は、静かで流れるようなインストゥルメンタル。
「お、これから始まるのかな」
といった感じの人たちが、何人か立ち止まる。

2曲目は、アップテンポな演奏に合わせて、アタシがボーカルもする。
アタシの歌声はよく、平たいと言われる。
聴いてくれている人たちの耳には歌声が残る。印象も残るだろう。
なぜかといえば、声が平たすぎて、耳の奥まで届かないからだ。耳にこびり付くのだ。鼓動を震わせない。心を震わせない。

お客さんが家に帰ってから耳掃除をした時、アタシのボーカルが部屋に響くという。平たい歌声が、夜に開く。
青春
公開:18/10/07 01:23
すこし不思議、理不尽、不条理 むう宿題4/10

undoodnu( カントー地方 )

構成の凝った作品が好きです。
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