電虫

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「なあ、デンチュウって知ってるか?」
行きつけの焼き鳥屋で古き友人がそう切り出した。
「電柱?そんなの誰でも知ってるだろ」
電信柱は景色に溶け込んで目立たないが、町の至る所にあって、電気を家々に送り届けるためには欠かせないものだ。
「あれな、実は、虫らしいぞ」
こいつ。もう酔ったか…
馬鹿馬鹿しい。ただのコンクリートの柱が虫だと?
「へー、じゃあその虫は何食ってんだ?」
「電気に決まってるだろ」
流れてくる電気を少しばかり頂戴して、その対価として電虫はじっと地面に突き刺さっているらしく。
「じゃあ、その虫が死んだらどうなる」
「別の電虫がその場に収まるだけだよ。実は俺、今こういう仕事でな」
名刺には電虫管理社とある。
楽な仕事で、一生食える。お前もどうだ、と誘われた。

そのひと月後、俺は面接を受けに行った。
採用となり、配属先は送電課。
初日に研究室に連れて行かれ。
電虫に改造された。
ホラー
公開:18/10/07 00:43

Kato( 愛知県 )

ヘルシェイク矢野のことを考えてたりします
でも生粋の秦佐和子さん推しです

名作絵画ショートショートコンテスト
「探し物は北オーストリアのどこかに…」入選

働きたい会社ショートショートコンテスト
「チェアー効果」入選

ありがとうございます

 

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