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入社した初日、まず紹介されたのは伝書鳩の彼だった。

「伝言しか出来ないやつのことをよく"伝書鳩"と揶揄するだろう。彼もまさにそうなんだ。だからうちではもう彼は"伝書鳩"として働いて貰ってるんだよ」

上司にそう言われて僕はただ、はぁと頷いた。
そんな会社聞いたことない。
伝書鳩の彼は「よろしくお願いします」と元気良く頭を下げた。


ある日、他部署に依頼しなくてはいけない事項が発生した。しかし自分で伝えるには少し言いづらいことだったので、そうだ、と僕は伝書の彼を呼んだ。
「難しい案件で、しかも納期が短いから嫌がられるかもしれないんだけど」
僕が言うと、彼は二つ返事で「お安い御用です」と部屋を出て行き、すぐに「OK頂きましたー!」と戻ってきた。


「彼、凄いですね」
僕がぽつりと呟くと、上司がニンマリと笑った。
「当たり前だよ、彼は伝言のプロなんだから。何事も極めれば価値になる」
ファンタジー
公開:18/10/08 14:46
更新:18/10/10 17:52

持田瀞(とろもち)( THE EARTH )

持田瀞(とろもち)です。
小説描くのが好きです。
ショートショートも、長編も、とろとろもちもち一歩ずつ。
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