三途の待合室

33
27

——悔いのない人生だった——

三途の川を目の前に男はそう思い、渡し舟に乗ろうとした。
しかし、受付の女性は申し訳なさそうに言った。
「本日は大変混雑しておりまして、1時間ほどかかります。番号でお呼びしますので、待合室でお待ちください」
男は「39」と書かれた札を受け取った。

待合室は、病院のそれにそっくりだった。
駆け回る少年、談話する老人たち、貧乏ゆすりをする男性、いかにも具合が悪そうな女性…

手持ち無沙汰になり、本棚を眺めて驚いた。
本棚には男が今までに読んだ本が並んでいた。

貸し出し欄に自分の名前が書かれている本、栞として映画の半券を挟めていた本、生活が苦しく止むを得ず売った本、病室に持ち込んで繰り返し読んだ本、母が読み聞かせてくれていた絵本、娘に読み聞かせていた絵本…

「39番の方、どうぞ」
女性の声がした。

名残惜しさを感じつつ、男は本を棚に戻し、渡し舟へと向かった。
その他
公開:18/10/08 00:49
更新:18/10/08 01:00

ぱせりん( 千葉 )

北海道出身です。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容