凶花~プロローグ~

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「ここから先は入ってはいけない」
ガーデンの管理人は言った。
「何故?」
「この先の温室に近寄ってはいけない花がある。ずっと蕾のままの」
「何故?」
「咲いちゃいけないからさ」
管理人は、肩をすくめた。
「何故?」
「あなたは質問が多いな。凶花だ。咲くと災いが起こる花さ。ガーデンにはたくさんの花が咲いてる。この花たちの栄養分は何だと思う?皆が作る楽しくて綺麗で不思議な話だ」
管理人はこちらをじっと見た。
「あなたはどんな話を作るのかな」
今度は僕が肩をすくめた。
「色々だよ」
「凶花は、忌まわしい話を好むのさ。それを栄養にして花を開く。だからガーデンはあの花を隔離した」
警戒するような目で僕を見たその刹那。
「へえ、見てみたいな」
僕は管理人に顔を寄せ、目の奥を覗き込んだ。

その目から光が失せ、暗い影が覆う。管理人は首に下げていた温室の鍵を取り出した。

「案内しましょう。温室へ」
その他
公開:18/10/05 01:00
更新:18/10/05 00:49
10の忌まわしい物語

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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