110. 銀木犀の初恋

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銀木犀は恋をしていた。
いつもイヤホンで音楽を聴きながら鼻唄を歌って歩いている
自分より少し背丈の低い青年に。

青年は茶髪でイマドキの男の子だったが
その格好とは裏腹に

野良猫に必ず声をかけた。
ペットボトルのゴミを拾った。
子供が通りかかると車道に飛び出さないよういつも優しい目で見守った。

でもこちらには決して顔を向けてくれなかった。
自分は柔らかい香りしか持っていないので、気がついてくれないのだろう、そう推測した。

だからメジロが来るのをジッと待った。
数日たってようやく上空を通りかかったとき
そっとお願いをした。

翌日、青年がここを歩くいつもの時間に
メジロがいくつかくわえて持ってきてくれたのは、強い香りを放つ金木犀の花。

『あっ!』という言葉と共に青年の笑顔がようやくこちらに向いた──。
ファンタジー
公開:18/10/06 02:26
更新:19/01/24 21:44
銀木犀は香りが弱い 銀木犀の花言葉は 「あなたの気を引く」「初恋」

ことのは もも。( 日本 関東 )

日本語が好き♡
18歳の頃から時々文章を書いています。
短い物語が好きです。
どれかひとつでも誰かの心に届きます様に☆
感想はいつでもお待ちしています!
宜しくお願い致します。

こちらでは2018年5月から書き始めて、2020年11月の時点で300作になりました。
これからもゆっくりですが、コツコツと書いていきたいと思います(*^^*)

2019年 プチコン新生活優秀賞受賞
2020年 DJ MARUKOME読めるカレー大賞特別賞受賞
2021年 ベルモニー縁コンテスト 入選

 

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