私は勤めたい

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 朝は背広を着てラッシュの電車に乗り、会社の玄関前で大勢の同僚や上司と合流し、つまらない朝礼の間は、後輩の女子社員と目配せして笑い合う。
 西に大きなプロジェクトがあれば、グループ一丸となって残業し、東に障害が発生すれば、頭を丸め、駆けつけていって土下座する。
 昼は賑やかな社員食道でAランチのトレイを持ちつつ同僚と語らい、屋上ではバレーボールに興じ、上司の奏でるギターに耳を傾ける。
 部内には派閥があって、手柄の取り合いも日常茶飯事だが、度を越した振る舞いには、社長の鉄槌が下されてノーサイド。
 営業に出るといっては喫茶店でダラダラし、誕生日や結婚記念日のお祝いを怠ることなく、新入社員の噂話に花を咲かせ、きちんと定時にあがる。
 近くの洒落たバーや、気の置けない居酒屋に毎晩集い、なぜかそこから歩いて帰宅できる。
 そんな、ドラマでよく見る、何してるのか分からない会社に、私は勤めたい。
その他
公開:18/10/05 21:58
更新:18/10/06 13:11

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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