「喪失と再生」
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冬。最愛の妻を亡くし、家の中はまるで塀に囲まれた独房。もはや生きる気力もない。どれくらい外に出ていないだろうか。空腹すら感じない。
顔に手をやる。伸び放題の髭。頬も痩けた。ふぅ、と目を閉じる。
ごそり、と外で物音がした。ふらり、と何かに導かれるように外に出る。久々の外気。光に目がくらみ、しゃがみこむ。
ピョン。
何かに飛び乗られた。俺の膝の上にちょこん、と座っている。それは白い塊。生き物?
ふと妻の香りを感じ、この謎の生き物にシロと名付け飼う事にした。
春。俺はすっかり生気を取り戻していた。シロと恋人のような日々を過ごしていたからだろう。
そんなある日の夜。シロの頭からピョコンと長い耳が生えた。そして、その耳を翼のようにして窓から飛び立ったのだ。シロはそのまま月に向かい、消えた。
妻が愛していた兎、だったか。
窓から射し込む月明かりに兎の影。それを見つめる俺の目はおそらく、赤い。
顔に手をやる。伸び放題の髭。頬も痩けた。ふぅ、と目を閉じる。
ごそり、と外で物音がした。ふらり、と何かに導かれるように外に出る。久々の外気。光に目がくらみ、しゃがみこむ。
ピョン。
何かに飛び乗られた。俺の膝の上にちょこん、と座っている。それは白い塊。生き物?
ふと妻の香りを感じ、この謎の生き物にシロと名付け飼う事にした。
春。俺はすっかり生気を取り戻していた。シロと恋人のような日々を過ごしていたからだろう。
そんなある日の夜。シロの頭からピョコンと長い耳が生えた。そして、その耳を翼のようにして窓から飛び立ったのだ。シロはそのまま月に向かい、消えた。
妻が愛していた兎、だったか。
窓から射し込む月明かりに兎の影。それを見つめる俺の目はおそらく、赤い。
ファンタジー
公開:18/10/03 23:30
塀の中の白い恋人
スクー
まったり。
2022年…3本
2021年…12本
2020年…63本
2019年…219本
2018年…320本 (5/13~)
壬生乃サル(MiBU NO SARU)
Twitter(@saru_of_32)
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