クローン彼女

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あの長い黒髪、モデルのようにすらりしたシルエット、どこか幸薄そうな顔立ちは、やはり僕のガールフレンドだ。食堂を出てこちらへ近づいてくる。胸が高鳴る。僕は、こちらから声をかけるべきか迷う。彼女が僕のことを知っているかどうかわからないからだ。
先週末に、彼女は一度死んでいる。
今、僕の目の前にいる彼女は、亡くなったオリジナルの彼女のクローンだ。
この時代の人間は、自身のクローンをスペアとして持つことができる。自分が死んだ後は、彼らが自分の人生を引き継ぐわけである。しかし、彼らは必ずしも自分自身と全く同じであるとは限らない。自分の記憶をどの程度彼らに引き継がせるかはオリジナルの意思による。
したがって、オリジナルの彼女がクローンに僕についての記憶を分譲したかはわからない。
ドキドキして胸が張り裂けそうだ。それでも勇気を出して声をかけるーーーー。
「今から美味しいコーヒーを飲みに行かない?」
SF
公開:18/10/03 21:25

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