涙のビデオ判定

息子の小学校最後の運動会。妻は季節外れのインフルエンザにかかり熱を出した。ゾンビのように起き上がってきた妻は、なんとか弁当を完成させると息子を送り出し、僕に向かって指を指した。
「いい？私は今日行けないから、小学校最後の運動会しっかりビデオを撮ってきて。よろし…く…」
そういうと、妻は布団にパタリと倒れた。
俺の使命は重大だ。
毎年来ているのに、校庭が広く感じる。体操着を着ていると皆同じ顔に見える。徒競走は良かった。走る順番がわかっていたから。だが、フォークダンスだ。
曲が始まって生徒が入場する。息子はどこだ？俺はやみくもにビデオを回した。とりあえず全体をまんべんなく撮るんだ。そうすればきっとどこかに…。

その日の夜は、フォークダンスのビデオ判定会だった。俺と妻はどれが息子かを判定するのに、目を皿のようにしてビデオを眺めた。
「いたー！！」
一瞬息子の姿が写り、フレームアウトした。