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 ガタンゴトン
   ガタンゴトン、と電箱はゆく。

昔と違い塔京も電箱の便が良くなり、通勤もずいぶんと楽になった。百八階ある塔内の行き来も、十時間もあれば可能になったのだ。
終天は神宿駅だが、更に上の階に「光虚」という隠された階が在るという。そこには苦内鳥が飛び交い、巨大な木の下には「天脳」と呼ばれる男が眠っているという。剥き出しの脳から出る沢山の管が樹木へ繋がれ、この塔京を形作っているという。その男が目覚めると、塔京はもとより、全ての幻視人が消滅するという噂だ。
そう、噂のはずだった⋯⋯。

が、今日はうっかりと寝過ごしてしまい「お客さん、終天ですよ」という駅員の声で慌てて降りてきたのだが、一体この場所はどこなんだ?
苦内鳥の群がるベッドに男が一人眠っていた。
「ま、まさか天脳っ!?」
大きな声を上げたのがまずかった。
男はうっすらと目を開け始め、塔京も俺もうっすらと消えていった──。
SF
公開:18/10/03 14:48
更新:18/10/05 18:03
塔京

渋谷獏( 東京 )

(੭∴ω∴)੭ 渋谷獏(しぶたに・ばく)と申します。 小説・漫画・写真・画集などを制作し、Amazonで電子書籍として販売しています。ショートショートマガジン『ベリショーズ』の編集とデザイン担当。
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