砂の塔。あるいはオアシス。

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「生を望むならオアシスが。死を望むなら砂の塔が」
 いづれ死ぬなら、望んで死を迎えたい。
 行列に並んで三日。塔はつねに鮮明に見えていた。砂を纏い、砂に崩れ、その輪郭を絶えず変化させながら、尖端は蒼穹遥かへ、基底は巻き上がる砂へ隠して、屹立していた。
 塔まではあと三日か。それとも三ヶ月かかるだろうか。
 それでも塔に取り付いた人々の、萎びた唇から発せらる歓喜の叫びと、法悦の表情とは、手に取るように分かるのだ。
「沙漠は空と同じこと。空は塔と同じこと。塔は行列と同じこと。行列は沙漠と同じこと」
 砂を纏う赤い塔。纏うのは塔に取り付いた行列の人々だった。崩れる赤い砂の塔。崩れるのは塔に取り付いた行列の人々だった。
 墜ちる。墜ちる。叩きつけられた人々はバラバラになり、体内に残った僅かな汁気を撒き散らし、風紋をくねらせる。
「水だ!」
 そこをオアシスと見る行列が、塔の反対側に続いている。
ファンタジー
公開:18/10/03 14:38

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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