スパンコールと屯田兵の記憶

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子供の頃、母と私と妹で祖父母がいる北海道に遊びに行った。
妹と祖父母の家の周辺を散歩していると、道端にキラキラ光るスパンコールが落ちていた。私と妹はスパンコール集めに夢中になった。

「お姉ちゃん、変な匂いするよ」
気が付くと目の前に沼があり、大きな水音と共に巨大な蛇が沼から現れた。
逃げようとしたが、恐ろしくて足がもつれてうまく走れない。すると、教科書で見た兵隊さんのような男の人が私たちの前に立ち塞がり、大蛇に向かっていった。
私は振り返らず妹の手を引いて無我夢中で走った。

「その兵隊さんは屯田兵だったご先祖様かもしれんね。あんたらを守ってくれたんだね」
母は言った。
握りしめていたスパンコールは、鱗のようにも見えた。

言い伝えではあれは蛇の妖怪で、嫌な匂いを放ち、近づくと皮膚が腫れ死ぬこともあるとか。
スパンコールの衣装を見るたびふと思い出す。あの沼はもうどこにあるか分からない。
その他
公開:18/10/04 12:57
更新:18/10/04 16:15
スクー スパンコール衣装の屯田兵

むう( 地獄 )

人間界で書いたり読んだりしてる骸骨。白むうと黒むうがいます。読書、音楽、舞台、昆虫が好き。松尾スズキと大人計画を愛する。ショートショートマガジン『ベリショーズ 』編集。そるとばたあ@ことば遊びのマネージャー。

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