夢のハワイで綱引き

「一度ハワイに行ってみたいが金がない。そこでハワイを日本まで引っ張ろうと思うんだが」
友人は言い淀んだ。何か問題があるのかと聞いた。
「どうやってロープを繋いだらいいのか」
友人は言い淀んだ。
任せろと言い私はハワイ島に向かった。ほどなくロープが飛んできたので私は何度かロープを引き合図を送った。
引かれ始めたロープをきつく握り、踏ん張ると足が岩場に食い込んだ。しばらくの静寂の後、ずずっと島が動き出した。他の島にぶつかり続け最後にはハワイ諸島ごと移動した。

「日本本州の方がはるかに大きい。重さも圧倒的だろうから日本は動かん」
友人の言葉は正しかった。昔から賢い奴だった。
ロープの先には汗だくの友人が転がっていた。
「途中で気付いたんだが」
友人は言い淀んだ。何か問題があるのかと聞いた。
「パスポート。まだ作ってなかった」
ため息をつく友人にハワイ土産を渡すと笑ってくれた。