ポプリ殺人事件

その日、被害者は睡眠中に何者かによって窒息死させられた。
「枕元にはラベンダーのポプリ。検察側は殺害幇助の罪で起訴します！」
ポプリは困り果て、青ざめた。何せ心地よい眠りを求めたのは主人だ。自分は仕事を全うしただけ。この仕事に誇りを持っていた分、戸惑いが大きかった。
「異議あり！」
弁護士が声を張り上げた。
「ポプリには動機がないことを主張します。しかし、立証の手立てはありません。そこで弁護士側は、新たな証人を出廷させたいと思います」
証言台に現れた人物の姿に傍聴席はざわついた。ゴツゴツした岩のような肌に細い目。名前は鳥兜 烏頭。彼は真顔で呟いた。
「彼は蓬と間違えたんだろうね。僕の芽を刈り取って全部持ってってしまった。毒があるからって悪役にされちゃたまらないよ。僕だってお先真っ暗さ」
検察の杜撰な捜査が明るみになり、ポプリの無罪が認められた。今は芽を摘まれた鳥兜のお見舞いに行っている。