冬の職人

24
27

朝の冷えた空気を感じて、のっそりと寝床から起き上がる。
外気温を示す目盛りは摂氏マイナス二十二度を示し、窓からはよく晴れた景色が覗く。庭に立つポールの先端に括りつけられた旗は、しっとりと静かに俯いていた。

気温良好。天候良好。風速良好。

チェック項目を確認してからいつもの仕事着に着替えて、重いドアを押し開ける。瞬間、隙間から研ぎ澄まされたような空気がすうっと流れ込んだ。

外へ出ると、ポケットからアイスクリームスプーンをひとつ取り出して、キンとした空気の空へとそっと立てた。
そのまま優しく引っ掻いていくと、空の表面がこそげるように、結晶がはらはら舞い落ちる。結晶は太陽の光を反射して、きらきらとあちこちで輝いてみせた。

「あ、見て! ダイヤモンドダスト!」

背から聞こえる誰かの声を確認した俺は、ひとつ伸びをして二度寝の寝床へと踵を返した。
白んだ空は優しく、吐く息をふわりとさらった。
ファンタジー
公開:18/10/02 23:04
更新:19/10/23 07:45
スクー スプーンで掘る ダイヤモンドダスト ふしぎな職人

ゆた

高野ユタというものでもあります。
幻想あたたか系、シュール系を書くのが好きです。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容