補欠走者

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「ねぇ、お兄ちゃん。リレーに出てくれない?」
今週末は弟の小学校の運動会。父も母もその日は行けない。
兄の僕に順番が回って来たって訳だ。

中学2年の秋、同級生のいじめにあって学校に行かなくなった。
もうすぐ1年。高校受験も近づいてくる。
焦りは大きくなるばかりだった。

「分かった。出るよ」
「お兄ちゃん、ありがとう!」

運動会当日。
「400メートルリレーにご参加の方は、お集まりください」
若いからというだけでアンカーを任された。

前の走者からバトンを受け取り、全速力で走る。
僕は先頭でテープを切った。

「お兄ちゃん、カッコいい!」
ゴールで待っていた弟は嬉しそうだ。

実は、あれから毎日家の周りを走っていたんだ。
気づかれたくなかったから、いつも夜中だった。

「ありがとう、お兄ちゃん!」
お礼を言いたいのはこちらの方だ。

明日から、僕も自分のレースに挑戦するよ。
青春
公開:18/10/02 15:55
更新:18/10/02 16:05
スクー 父兄参加の補欠

ろっさ( 大阪府 )

短い物書き。
皆さんの「面白かったよ!」が何よりも励みになります。誰かの心に届く作品を書いていきたいです。

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