秋風とメガネと星花火

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夏の終わりに花火をした。花火なんていつ以来だろうか。
温水プールみたいに肌へ纏わりつく暑さの中、何の前触れも無く貴女は私の手を取った。
そういえば、子供の頃も貴女がこうして私を連れ出してくれたっけ。
私達、大人になっても全然変わらないのね。
手持ち花火の灯りの1つ1つが私達の思い出を幸せに彩っていく。
そして、最後の線香花火が弾けた。
貴女の眼鏡に乱反射する星の光。レンズの奥の天球に吸い込まれそう。もし本当に吸い込まれてしまったら…。なんて馬鹿馬鹿しい妄想が頭を掠める。
「綺麗ね。」
思わず言葉が零れ、顔を上げた貴女と微笑みを交わす。
ふっと、涼し気な風が通り過ぎる。
ポトリ。
夜の帳が落ちて、心地好い時間の終わりを秋風が告げていった。
いや、今の関係から一歩踏み出せと背中を押してくれたのかも。
辺りに漂う幸せの残り香。私はそれらを振り払い貴女の手を取った。
「あのね。私、貴女の事が…!」
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公開:18/09/29 14:34

普通のへいわじん

月の音色にて噂を聞きまして。
よろしくお願いいたします。

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