郵便ポスト

8
11

あれは夢だったのかもしれない。
10年以上も昔、幼稚園の頃、うだるような暑さの夏休みの日の出来事だった。
駄菓子屋へ行く途中にある円柱の郵便ポスト。いつも威圧感を感じて嫌いだった。一人で通る時は勢いつけて一気に走り抜ける。
その日も走り抜ける気持ちでポストに差し掛かる頃、長い黒髪の女性が話しかけてきた。
「坊や、お菓子あげる。一緒においで?」
とても魅力的な言葉に聞こえた。
「うん。飴もある?」
飴もあるわよ、おいでという女性に手を引かれんというところ、不意にあの郵便ポストの影が伸びた!影が僕の足に絡みつき一歩も動けない。
「ひぇっ!」
女性はそう叫ぶと走り去っていってしまった。僕は怖くて振り返ることは出来なかった。そのまま恐怖で失神する。
気がつくと家の縁側で寝ていた。
「駄菓子屋はどうしたの。」
お母さんの優しい声。

あの日の出来事を思い出した時、郵便ポストに目礼して通り過ぎるのだ。
ファンタジー
公開:18/09/29 13:46
月の音色 月の文学館

ひさみん

ショートショートというよりも短編小説、掌編小説という感じになってしまうかもしれません。
自分のペースでやっていこうと思っております。
ショートショート・ガーデンにアクセスする頻度は高くありません。
1回のアクセスで多くても10作品見るかどうかです。すみません。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容