オリエント急行は停まらない

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 同窓会から戻った妻が怪訝な顔をしていたので「どうしたの?」とたずねると、「タイムカプセルを掘らなかったの」という。
 妻は2003年3月に高校を卒業し、その時「同窓会は15年後」と決まったのだそうだ。
「その頃、事件があったよね?」
「そう。体育教師の嫌な奴だった。器具庫で滅多刺しで」
「いろいろ聞かれた?」
「ええ。ま、いろいろあったから…」
 犯人はまだ捕まっていない。
「15年もたつとみんな変わったでしょ?」
 僕は端末を見ながら、尋ねた。
「なんだか、他人行儀だったな。みんな、あんなにまとまってたのに」
「君は、その先生が亡くなったころは、入院していたんだよね?」
 僕がそう聞くと、妻は「そう。けっこう大変だったんだよ」と笑った。
 その笑顔で十分だった。僕は、公訴時効に関するHPを閉じた。
「さっきから真剣に何見てるの?」と妻が言った。
「オリエント急行殺人事件」と僕は答えた。
ミステリー・推理
公開:18/09/29 11:29

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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