吊り革

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電車に揺られながら、シートで酔いつぶれたサラリーマンを見下ろしていた。湯気のたつ饅頭のような男。吊り革に掴まって疲れた身体をぶら下げていると、湯気が目に入り酷くしみた。思わず手を滑らせ、その醜い腹に頭からめり込む。跳ね返る。バカな。あまりの勢いで跳ね返ったものだから、爪先立ちになってバレリーナのように反転。反対側の吊り革を掴んだ。
驚いた。反対側のシートにも同じような饅頭男がだらしなく眠っていた。双子のように瓜二つ。反転したと思ったが一回転だったのか。いや、饅頭男のとなりに座る不機嫌な女が違う。こんな真っ赤な女ではなかった。唖然としていれば、再び手を滑らせ、その醜い腹にめり込む。跳ね返る。爪先で立ちあがり反転。元の吊り革に戻った。
驚いた。男は血を噴いてのびていた。となりの不機嫌な女は血を浴びて真っ赤に染まっている。俺は目を丸める。そして、また手を滑らせた。
ホラー
公開:18/09/29 06:11
更新:19/02/23 18:16

puzzzle( 神奈川19区 )

作文とロックンロールが好きです。
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