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透き通った青く、青い海。ぬける青空。
誰も知らない。出会うものすべてに好奇心が満ち溢れ、単純な心は躍り出す。
「どーでしたかー?島は、楽しめました?」
港へ送り届けてもらう車の中で、スタッフの女の子が微笑んだ。テキパキと宿の業務をこなしていた彼女は、この島の色に馴染んでいた。けれど、私のような一見の観光客が知りたがる情報について、彼女は何も持ち合わせていなかった。
「お天気に恵まれました。」
私は目を細め、港へ続く水平線を見つめていた。
岩場に、一人の老人が釣り糸を垂らしていた。
「ああ。彼はね、一度もこの島を出たことがないんですよ。」美しい海、それだけの島。
彼女は示し合わせたように言った。
「私には無理だなー。この島だけで、一生を終えるなんて。」
彼女は、この島の空気を存分に吸い込んで、新天地へ飛び立つ日を夢見ていた。
私は、男がこの島で見た天国と地獄を知りたい衝動に駆られた。
青春
公開:18/09/28 22:56

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