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「始まった」

わたしは勢いよくペンを握り、振込用紙の隅に急いでメモをとる。今日は紙の上に書けたのだからまだいい。先週「これ」が始まった時、どうしても紙が見当たらず机の上に油性ペンで書き込んだ。

わたしは決して潤ってはいないが、文字をお金に変えて生活をしている拙い物書きである。そんなわたしにアイディアが降る時、わたしの息は常に止まっている。

理由はよくわからないけど、いつも息を吸って吐き出すその寸前に「あっ」と降るものがあって、しかしそれは息を吐くと途端に消えてしまう。だからとにかく息の持つ限り急いでメモを取るようにしているのだ。

息を堪えれば堪えるほどイメージは鮮明になる。今回の作品はきっと大作になる。意地でも欲しい話題作。わたしはいつも以上に息を止めペンを走らせた。


***


カスタマーレビュー
★★★★☆ 遺作が話題の大作!
死に方で話題になった作品だが、おもしろかった。
その他
公開:18/09/30 11:42

二十一 七月

にそいち なながつ

まずは100話お話を作るのが目標です。

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